Who are you?

2008 年 11 月 26 日 | カテゴリー: 中の人の戯言

こんにちは、某です。……ではなくて八索です。

学祭の後片付けやらでしばらく授業がなかったりしますが、昨日はちょっと手続きのため大学に行ってきました。諸事情あって見事に空振りに終わったのはヒミツです。

その後時間が空いてしまい、何もしないで帰るのはしゃくなので映画を見てきました。それも話題作とかでは全然なく、たまたま渋谷でやっていたザ・フー:アメイジング・ジャーニーというよくわからないチョイス。

タイトルの通り、60~70年代を代表するバンドの1つであるThe Whoの歴史を追ったドキュメンタリーです。映画館の中に入ると、予想通りというべきか、多分長年のファンなんだろうなという感じのおじさんとか、暇そうな大学生とか(お前もだ)、全くロックには縁のなさそうなおばあさんとか、とりあえず平日の昼間に映画を見る時間があるという以外の共通項が見出せない観客構成でした。

肝心の中身のほうですが、予想よりもずっと面白かったです。ボーカルのロジャー・ダルトリー、ギターのピート・タウンゼント、ベースのジョン・エントウィッスル、ドラムのキース・ムーンというメンバーそれぞれが個性的というのを通り越して破壊的なまでにエネルギッシュで、CDで音だけ聞くのに比べて映像を見るとずっとインパクトがありました。

興味を引かれたのは、現在のタウンゼントが以前のダルトリーを評して「ジョンとキース、それから俺も天才だが、あいつはただの歌手だった」というシーン。The Whoは元々ダルトリーが結成したバンドで、彼らは常にバンドの主導権を握ろうとしていましたが、他のメンバーの反発で逆に一度バンドから追放されてしまいます。それからダルトリーは心を入れ替え、The Whoの「声」になろうと必死の努力を重ねます。それはロックオペラ「トミー」で結実し、彼もThe Whoにとって唯一無二の存在であると認められるのです。

このような「凡人」ダルトリーと対照的なのが、卓抜したテクニックを持ちながらアルコールとドラッグにおぼれ、32才の若さで命を落とした「天才」ムーンです。彼には自宅を爆破したとかプールに車を沈めたとかよく意味のわからない伝説が数多く残されていますが、「狂っている」と評されたその超絶的なドラムプレイの通り、バンドに参加した当初から精神的な問題を抱えていたようです。そのような人物にとっては、スターとして得た金と名声は生活を狂わせ破滅へと向かわせるものでしかなかったのでしょうか。もし彼に才能がなければ、貧しいながらも世間並みの人生を送れていたかもしれません。しかしそうであったならば、彼の遺した音楽が彼の死後も輝き続けるということもなかったでしょう。「天才」であるがゆえに身を持ち崩したように見えるムーンとエントウィッスルという二人のメンバーの死を乗り越えて、悟りの境地に達したかのように穏やかに語るダルトリーを見て、表現者にとっての「才能」というのはなんなのかということを、物書きの端くれとして考えざるを得ませんでした。

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