敵を倒す意味などない!「Near The Sun」制作記#14
15期のドッグウッドです。
今回は「Near The Sun」における「敵を倒す意味」について話したいと思います。
一般のゲームでは、敵を倒すと経験値やお金が得られることが多いです。このシステムはよくできていて、「戦闘」という楽しさをプレイヤーが積極的に行うモチベーションになり、プレイヤーの努力がポジティブにフィードバックされる仕組みになっています。「やらされている感のある戦闘」はつまらないですからね。
しかし、「Near The Sun」では敵を倒しても経験値もお金も得られません。
これは本作が分岐するストーリーを基盤とするシステムであり、「戻ってやり直す」ことが想定されているからです。戻ったときに「経験値をためる」「お金を稼ぐ」などの行為がまたやりなおしになるのはきついですよね。
また、敵を破壊することはできず一時的にマヒさせることしかできないので、敵はすぐに復活します。その場ですぐにお金や経験値を無限に得ることができます。「同じ敵は一度しかお金を落とさない」ならどうでしょう。ワールドマップで前のステージに戻って周回ということができないので、詰み状態が発生する可能性があります。それなら、「一度お金を落としたら次のチェックポイントを通るまでお金を落とさない」……複雑すぎますね。
ということで、「敵を倒す」と「お金を得る」のちょうどいいバランスは本作では難しそうです。本作では敵を倒したときに何らかの報酬が得られるシステムは導入しないことにしました。
では、問題があります。「敵を倒すモチベーション」は?
敵を倒したってなにも得られないのなら、無視して先に進めばよくない?
以下が解決策です。
1.敵をストレスの塊にする
2.敵を倒す瞬間を気持ちよくする
3.「無視して先に進む」こと自体をゲーム性にする
(4.ドアを設置して無視できなくする)
まず一つ目。プレイヤーに「敵を倒したい!」と思わせます。「Near The Sun」では敵の視界に入るとHP(エネルギー残量)が削れていくのですが、このときスローモーションになります。これはプレイヤーに次の動作を考える時間を与えるとともに、爽快なゲームプレイを邪魔するものとなっています。
プレイヤーはこの視界に入るとストレスを感じ、排除したいと考えるようになります。

そして二つ目。敵を一撃で倒したときの大量のエフェクト、音、ヒットストップ、画面振動での手ごたえです。これについては前回言及しましたね。視界に入ってスローモーションになっているところをダッシュで駆ける、この爽快感は何度でも味わいたくなるものです。2Dアクション自体爽快感を求めてやっているので、楽しさの原点に戻った感じですね。

3つ目。そもそもステルスアクションというジャンル自体が「敵を避けること」をゲーム性にしています。敵に見つかるか見つからないかのギリギリで先に進む達成感を得られるようなレベルデザインにしたいものです。
4つ目。複数の敵を同時にマヒさせないと進めないギミックがあります。このギミックは「敵の撃破」に対して「先に進める」という報酬を提示します。

ということで、「敵を倒す意味」について話してきました。
単にお金やショップシステムを作るだけでも大変ですよね……買えるアイテムも作らないといけないですし……。本作ではそれで得られる「楽しさ」は少ないと判断して、ステージをすいすいとクリアする楽しさをメインにしました。さて、この選択が吉と出るか凶と出るか……。ビルドをゲームの楽しさの本質とする人とは相性が悪いかもしれないですね。
次回はゲームダンジョン5・外伝出展について話そうと思います。