ボス戦の演出に凝りたい!「Near The Sun」制作記#22

2025 年 8 月 24 日 | カテゴリー: Near The Sun, 製作について

15期のドッグウッドと申します。

漫画や小説で、ボス戦というのは非常にアツいですよね。
知略を用いて敵の能力を看破したり、回想で秘められた過去を思い出して覚醒したり……。
ただ、ゲームではこれらの演出は入れづらいな……と思っています。
ボス戦の演出の難しさについて、今回は書いていきます。

1.登場シーン
基本的に、2Dアクションのボスの登場シーンは「ばったり会う」です。
う~ん、味気ない……。
ボスならやはり、強く見える方が戦いがいがあります。
事前に強さについて知らされているのが定番ですが、ボス戦直前に演出で強さを示したいところ。強キャラの仲間がやられているとか、強い敵の死骸が転がっているとか、ばったり会うだけにしろそういう演出は入れたいところですね。
また、意外性を出すためによく使われるのは「擬態」です。花を調べたら成長してボスに……とか、たまに見ますよね。ただ、地形的にボス戦だろうな~とプレイヤーがわかっていることがほとんどなので、「意外性」をきちんと持たせるには、「別のイベントかと思ったらボス戦だった」のような演出が必要です。多くの作品ではボス前にチェックポイントを置くことが多いので、それで感づかれそうでもありますが……。
それに、ただ「意外」なだけでは演出上たいした意味がありません。ストーリーとして「これで全部うまくいくな」と安心したタイミングで「意外」を使うことでプレイヤーの感情を揺らすことができます。簡単な例ですが、ヒロインと喧嘩してたけど和解して一安心、その次のシーンで後ろの花が成長してボスになり、ヒロインの首を刎ねたらプレイヤーは驚くとともにボスへの憎しみが高まりますよね。「ボスがヒロインを憎んでいた」などの文脈は先に示さないといけないですが……。「仲間と思っていたら実はボスだった」演出も使いやすいなと思います。
さらに、工数の問題があります。画面外からボスを登場させるのは大変なんですよね……。トコトコ歩いてくるんじゃ威厳もないですし。たいていワープホールが開いて登場、とかになっていることが多い気がします。魔法やワープがない世界観なら、基本的に「隠れている」か「ばったり会う」演出しかできないのもわかります。「すでに攻撃を受けているぞ!」でボス戦が始まるとか、やりたいんですけどね……。
「いつの間にかプレイヤーのすぐ後ろにいる」などの演出で不気味さを出す……などもしてみたいですが、2Dアクションはカメラの向きが固定されていて画面が連続的なので難しいです。こういう制限は漫画などの他媒体に比べてキツいですね。カメラを別ターゲットに移動させて、戻ってきたら後ろにいる、などでしょうか。

2.ボスの強さの示し方
どうせ倒すなら、敵は強ければ強いほど倒す気が起きますし、そして魅力的であれば魅力的であるほど主人公が魅力的になります。
NPCに「とても強い敵だ!」と話をさせたり、登場時に咆哮させたり、一枚絵などを用意したり……いろいろと強さを示す方法はあると思いますが、どうせなら「ゲームならでは」の方法を考えたいものです。
一つは「序盤に出てきて歯が立たない演出」です。特殊勝利にするか負けイベントにするかですが、単に工数がかかります。のちに攻撃バリエーションが増える理由とかも考えないといけませんね。「あの時は本気じゃなかった……」というやつです。
あとは道中で倒せないギミックとして攻撃してくるようなボスですね。これはいままで倒せなかった敵が倒せるようになる、「敵を倒したい理由」がストーリー上だけでなくゲームプレイで示すことができるというメリットがあります。
後は主人公と同じタイプのゲージ(HP、MP)を持たせて同じような攻撃をさせることで主人公と単純な数値で比較をさせやすくする方法などでしょうか。自分が2回しか使えない必殺技を敵は10回使える、とかだと絶望感が増しますよね。


3.ボスを倒せる「理由」
ボスを倒すには「理由」が必要です。ストーリーにおいてボスはテーマを象徴する壁であり、主人公の目的を邪魔する障害です。ボスを倒す前と後で、キャラクターの気持ちは変化していなければなりません。それは仲間に対する信頼だったり、覚悟だったりします。
でしたら、ボス戦にその要素を含めるべきだと思います。なんの演出もなければ「戦ったら勝てた」以上のものにはなりません。本来倒せないような敵を「仲間の言葉」「自分の原点の再発見」などによって覚醒して倒し、その後にキャラクターの心情が変化するからこそドラマになるのです。
しかし、この演出は入れるのがとても難しいです。途中で主人公の心情を語るシーンは単純にゲームプレイの邪魔になります。また、覚醒したとして新しい能力を使わせるのには練習が必要です。また、敵を倒した後に演出を入れると、アクション的な最高潮とストーリー的な最高潮がズレてしまいます。
解決策としては第一形態から第二形態に移行するときに主人公のモノローグを挟む、とかですが、あくまで敵のための時間のはずなのに主人公の演出が入るのは違和感があります。主人公の覚醒に応じて敵が覚醒する、などの場合は良さそうですね。新しい能力に関しては、今まで条件付きでしか使えなかった技が条件なしで使えるようになる、とかでしょうか。しかしゲームバランスが崩壊するようなことはあってはいけないし、どうしてもチート感が出てしまうのは避けられないですね……。
また、敵の回想なんかは敵を倒した後に流してもいいかもですね。ボスが最後の一撃を避けず、主人公は何か違和感のある勝ち方をしたとします。戦いが終わった後、戦いの影響で瓦礫が崩れ、子供が下敷きになる瞬間、倒したボスの方が主人公より先に気がついて子供を助け出す、しかしボスはそのまま瓦礫の下敷きに……そこでボスの回想が流れ、ボスがなぜ最後の一撃を避けなかったかがわかる、みたいな「倒せた理由」のつけ方は可能です。「理由が先にわかっている方がアツい演出」は難しいですが、「理由がわからない謎の提示をして後で解決する演出」は比較的入れやすいですね。
あとは「敵に最後の一撃が入ると確定した瞬間」の演出でしょうか。アクション的には一番盛り上がるタイミングです。ただ、「理由」があって倒せたはずなのに、倒したら「理由」が表示されるという因果の逆転の違和感は残ってしまいます。逆に主人公がピンチに陥ったときに助けられるのはいい演出ですが、今度は「主人公が自然とピンチになる」のが難しいですね。第一形態を倒したら何故か主人公がピンチになっているのはシュールですし、そこに上手い理由がついていても演出感は拭えません。
結局、ビジュアルで「言わなくてもわかる演出」があれば一番いいですかね……。例えば「今まで倒した相手の姿になれるボス」がいて、「第二形態でヒロインの姿になる」とかの演出を入れれば、画面を止めなくても主人公がボスに対して怒っていること、怒りが力になっていることがわかります。

4.退場シーン
ボスの退場シーンも難しいです。これはストーリーの話では全くないのですが……。単に、「ボスがどこでやられるか」が確定していないので、その後の演出を作りづらいんですよね。世の中のゲームではディゾルブで消えていく、爆散、その場に崩れおちる、などが多いでしょうか。動かない巨大なボスだったら割と作りやすいです。あとは下に落ちていくとかですかね……一度暗転させて主人公とボスの位置を固定する、という荒技もあります。

ということで、ボスの演出について話してきました。
漫画やアニメではアツい演出であることが多いボス戦、ゲームでも主人公に感情を乗せてうまく作りたいです。個人的には自分の力だけでボスを倒した感が欲しいので、ボス戦の途中で新しい能力を手に入れたりとか、ギミックボス的なやつよりは道中でも使ってきた能力だけで倒せるボスの方が好みです。また、覚醒した主人公が負けることがあるのは、ご愛嬌ということで……。

次回は扇型の視界の表示方法について話します。

コメントはまだありません。