ここはとあるゴミ屋敷
目が覚めると、僕は薄暗い部屋の中にいた。
悪趣味な柄のカーテンの隙間からは灰色の鈍い光が覗いている。時刻は午後六時前……もう間もなく完全に夜の帳が下りるだろう。
――なぜこんな時間に起きたのだろう? 携帯を開いて眩しさに目を細めながら僕はそれまでの行動を振り返ろうとした。
そう、確か昨日の夜はお台場までDIVAのロケテに行って……病気のような勢いで徹夜して、DDRとDIVAのスペースを往復して、途中から翌日の整理券の列に並んで……2回、プレイできたんだ。
ニヤニヤしながら軋む身体を引きずって、電車に乗って自宅に――そこからの記憶があいまいだった。
頭が痛い。僕は布団の中で寝返りのような虫の蠢きのような動作をとった。暖房のせいで空気が澱んでいるのだろうか。まるで何時間も昼寝をしてしまったかのようなぼんやりとした頭痛がある。
そして、ずいぶんと腹が減ってしまっていることに気付いた。
「得意料理は肉じゃがでございます」
脳内の僕が相変わらず気味の悪いにやつきを浮かべながらそんなことを言う。正確には肉じゃがくらいしか作るものがないというのに。
何はともあれ、僕はのっそりと布団から抜け出し、立ち上がった。
汚らしい部屋だった。肉じゃがの材料があるのかも疑わしいところだ。それでも腹が減っている以上は台所に行き、何らかの模索をせねばなるまい。
精神的にも物理的にもよどんだ空気の中、僕は目覚めのヴェネスネをウォークマンで流しながら台所へと向かった。
――変に、くさい。
どうしたことだろう。不思議に思った僕は、流しの中を覗き込んだ。
「ああ、そうか」
そして全てを理解した。
ここはとあるゴミ屋敷……得意料理は……
(続かない)