どうも初めまして。sakanaです。新入生企画ノベルゲーム班シナリオ担当のsakanaです。憶えておくといいことがあります。具体的には、私が喜びます。
進歩状況は、まあちょっと危ない感じではありますが、なんとかしてみせましょう。……まあ、忙しいのは私ではなくてグラフィックや音楽やプログラム担当の人たちですけどね(笑) だけど私も一生懸命応援します。
さて、何を話しましょうか。これだけで終わるのも忍びないですし、私の個人的な話でも書きましょうかね。
この前電車に乗っていたら、カラフルなおじさんに出会いました。明るい緑を基調とした色遣いです。若い芋虫に子供が赤やオレンジのクレヨンで落書きした感じですかね。体は大きくてたるんだ体格をしていました。手には箒を持っています。きっと彼がそれに跨れば、この世界のエネルギーを流用し顕現させることができるのでしょう。
私はカラフルおじさんの斜め前あたりに立ちました。もちろん距離を空けてはいます。だけど間近で彼の様子をうかがいたいという私が感じた欲求は、皆さんにも理解して頂けるでしょう。
私は横目でカラフルおじさんをちらちらと見ていました。彼は目を閉じてじっとしています。彼はまるで彫像のようにぴくりとも動きません。そのまま三駅ほどを通過しました。やはり彼は身動き一つとりません。私はやがて、彼は本当に彫像なのではないかと思い始めました。いえ、その様子は絵画のようであったかもしれません。その色鮮やかなおじさんは誰かが何かを表現しようとして一両の車両に配置された一つの表現様式なのです。それはまだ誰にも伝わってないから、依然としてそこにありつづけているのです。
私はおじさんの意味を探ります。彼の姿を目に焼き付けるように観察し、彼に込められたメッセージを引き出そうとします。だけど皆目見当がつきません。私には、このおじさんはその独善的な思考回路が社会の常識という鎖を引きちぎって解放された唯の中年男性にしか見えませんでした。
私は申し訳なさでいっぱいになります。ごめんなさい。私にはあなたに込められた意味を読み取ることはできません。
その時です。電車が駅に到着して、電子音をならしながら扉を開けました。その途端、スイッチが入ったかのようにおじさんは開眼し、勢いよく立ちあがります。それは自分の縄張りに外的を感じ取った眠っていた獣のようでした。
おじさんは、私に箒を突き付けて何事かを叫びます。私にはうまく聞き取れなかった言葉なので、ここで何と表現していいかわかりません。「何事か」という表現で勘弁してください。とにかく、何事かを叫んで私に箒を向けたのです。
その時のおじさんの表情は真剣そのものでした。眉間にしわを寄せ、私を睨みつけています。そんな様子を見た私には、とるべき行動はひとつしかありません。私は「うわあ」と言ってその場を転げまわりました。幸い乗客は少なかったため、誰の迷惑にもなっておりません。するとおじさんは満足げな表情を浮かべ、私に親指を上に向けた握った右拳を差し出します。「グー」のポーズです。礼儀を考えて、私もグーポーズをしました。
そしておじさんはドアに向かっていきます。しかしながら、私とのやり取りに時間を食ったのか、出る前にドアが閉まってしまいました。おじさんは何も言わずにその場に立ちすくんでいました。窓に映った彼のうつむいた顔には、何か大切なものをなくしたかのような絶望がにじみ出ていました。
一期一会。この日本には彼のような愛らしい人がたくさんいます。あなたのすぐそばにいる家族や友達、恋人も、こんな可愛らしい一面を持っているかもしれませんよ?