2010 年 3 月 2 日 | カテゴリー: 製作について

どうも、Ralfです。
本日は我々の制作した弾幕STG“The Chaste Full-metal Maiden – Leiria –”に関するお知らせを2件ほど行いたいと思います。


まず1つ目、Leiriaのプロモーションムービーが完成しました!
(ニコニコ動画のアカウントを持っておられない方は上記のリンクをたどってください)

最後の方にネタばれを含んでおりますが、Leiriaの魅力を十分に伝え切れた動画となっておりますよ!
是非ご視聴あれ!


そしてもう1つ。
じお様から本作の主人公、レイリアのイラストを頂きましたのでここで公開させていただきます。

まー実は私もレイリアの全身像は知らなかったんですけどねw
イラストありがとうございます!


それで、現在鋭意制作中の新STGですが、もしかするとアレンジモードが付くかもしれません……?
まーまだほとんど雛型もできていないんですがねw
乞うご期待!

2010 年 2 月 25 日 | カテゴリー: 中の人の戯言

どうも森です。

yahooのページでメダルの数云々という話題を見て、やっとオリンピックをやっていることに気が付きました。

ということで、オリンピックについて徒然なるままに思ったことを書き連ねます。

まず、冬季オリンピックと言えば、北半球勢の活躍の場、といった雰囲気がありますが、これは単純に、北半球の陸地が寒いところにあるので皆冬季スポーツになれているからだ、というのは、誰もが思うところでありましょう。

南に住んでいる人たちは、競技人口が少ないうえに、練習するスペースが満足にないため、勝利を収めることが難しくなる、というわけです。

なら、夏季オリンピックなら、どうか?

陸地で行なうスポーツであるなら、北も南も雪の有無も関係ないはずです。

しかし、こちらも、やはり強いのは北半球に多いことに変わりはありません。

北と南という問題ですので、経済格差が……という可能性に気が付いている人は多いと思います。

たぶん、そのせいでしょう。金があればあるほど、練習スペースが増えるわけでして、生活に困らないなら、その分スポーツに打ち込める、と。

ここで自分が言いたいのは、格差をなくせ、ではなくて、その現状を差し引いても、南が強いということです。

夏季オリンピック、とりわけ陸上短距離では、黒人選手(必ずしも国籍は南半球ではありませんけれど)が圧倒的な実力を見せ付けているのは周知の事実です。サッカーにしても、彼らと日本人では、テレビ画面でも分かるくらいに体格差があります。

さて

唐突ですが、もしも、の話をします。

もしも、南の国が今よりずっと裕福になって、スケートリンクがバカスカ建設され、人口雪スキー場があちこちに作られるとしたら、冬季オリンピックで、北半球が我が物顔でメダルを奪うことが、可能であり続けるでしょうか。

個人的には、二十年後のスピードスケートあたりが怪しいのではないかと思っています。

2010 年 2 月 22 日 | カテゴリー: 製作について

teraLatte

こんにちは。ket.です。

なんだかんだ言ってもノンリニアはとーだい学内サークルなわけでして。2月の頭はみなさんテストで頭が一杯でございました。だけどもようやくそれも終わり、新しい企画も本格的にスタートするぞ!と意気込んでいたら……あれよあれよともう2月もおしまい。あれテスト終わってから何してたっけ……。そんな近況です。

そういえば、1月の頭に役職の引継がございました。現二年生から次期二年生へと執行部が移っちゃうあれです。そんな中この自分、どういう因果か部長に選んでいただきました。あれれ……。しかしまぁ、なったからにはこれから一年間、マイペースにやっていきたいとは思っております。ま、基本ぺらぺら喋るだけのような仕事です。よろしくお願いします。よしなに。

最後に宣伝をば。新入生企画としてパズルゲームForze!の企画をやらせて頂いた自分ですが、またやります。パズル。

タイトルは……まだ決まっておりませんが、「ベクタープライム(仮)」と呼んでおきます。

スタッフは、ket.(企画・プログラム)、むじ(グラフィック)、じゃんく♂(サウンド)、タナオ(シナリオ)、瑠璃(ボイス)、KIRI(技術サポート)、となりそうです。あくまで現状ですが……。内容は固まりつつありますが企画としてはまだまだこれから。Forze!を遥かに上回る(よてい。の)ハイスピードアクションパズル「ベクタープライム(仮)」をどうか一つ、よろしくお願いしますにゃ。

2010 年 2 月 19 日 | カテゴリー: 製作について

描き終わった!!と思った音ゲーでしたが、なにやら大幅にシステムを改変するということでまたしてもお蔵入りです。お蔵入り率パネェっす。でも絶対面白い!って思った変更だったらいろいろ犠牲にしなきゃならないそれが驚きの方程式なのです。とりあえずやたら数が多くてやたらちゃんと色塗ってあるラフだと思えば良いんじゃないでしょうか……saiにも慣れましたし……と思っていたらredjuiceさんの本を購入してちょまっな気持ちになったnananaです。

もったいないのでキャラクターおひろめ(?)もあってあげておきます。webが出来るのは……いつだろう?春には体験版くらいは、と言っていたのですが、できるといいなあ、と思いつついろいろ勉強中で間に合うかなあと。そんな不安な進行過程ではありますが、ちょっとすてきで新しいシステムだとスタッフ一同自負しております。まだできてないけど。お待ちあれ。

何せ初期企画の頃はメンバー全員ぷ○ぷ○に毒されすぎていたのでアレでしたね。○よ○よを脱した今私は個人的に零をプレイしているのですが、企画もシナリオもシステムもたいへんすばらしくてレビューを裏切りません。まあ有名ですが幽霊をカメラで撮らなくては倒せないというゲームなのです。撮るタイミングが幽霊がこちらに迫ってきたとき、攻撃しようとしてきたときなので、幽霊の一番怖い画を見なくてはならない、というところがミソです。フェイタルフレームが快感なので音ゲーにも応用しようと……アレ?ってしていたらその案は没ったので平気です。ともかくバイオ的にばきゅんばきゅんしまくって倒しまくるのでないそして派手派手しくなくひっと息をのむタイミングで奴らが来る和ホラーのお行儀良さと恐ろしさときたらもっともっと世界に誇って良いと思います。ノンリニアでもホラー作りたいけど怖いのだめな人が多いんですよね……ぷー(・ε・)

2010 年 2 月 13 日 | カテゴリー: 中の人の戯言

2月も中旬になってくると、もうすぐ春って感じがしてきますよね。

今日は雪でしたが。

10日ほど前に関東圏では雪が降っていたのですが、その時の雪は積もっちゃうくらいの大雪でした。それに比べて今日の雪は 残るような大粒のものではなく、風に乗って綺麗に舞う小粒のものだったので久しぶりに部屋のカーテンを開けてしばらく外を見ていました。地元ではあんまり雪が降らないので、ついついシナリオを忘れて見入ってしまいました。

シナリオ頑張ってますよ、たぶん。

2010 年 2 月 11 日 | カテゴリー: 中の人の戯言

2010 年度のことを 10 年度と書く表記にもだんだん慣れつつあります,と書こうと思って自分で打ったらやっぱり慣れていないことに気づきました W/H ですこんにちは.

冬コミ以来ノンリニアは何をやっとるんじゃい,と言われると他の人のぼやきからちらちらと新企画が見え隠れしていますね. サークル内ニートであった私も今期のプロジェクトには微妙な形で参加していて,前線に復帰しそうな感じで何よりです? ロミオな妖精さんは 2 巻と 3 巻だけ読んでいてあとは読んでいません微妙,はどうでもよくて.

割と年寄りになってしまった身としては立ち並ぶプロジェクトを眺めて期待と心配が半分/\という感じでおります.

心配と言えば(無理矢理つないだ)ノンリニアのオフィシャルページを心配する声が高まっています(主に内部で).

サークルの顔なのでかっこつけたい,今のままだと多くのプロジェクトを宣伝しきれない,そろそろ気分変えようよ等の意見が積もった結果,オフィシャルページをまるっと改装する方向で計画が進んでいます.お披露目できるのはまだちょっとというか割と先になりそうですが,今よりはかっこつけたものになるんではないかと思われます.

緩やかに変わりゆくノンリニアを今後とも生暖かく見守ってくれる人がどの程度いるのかわかりませんがそれでもノンリニアは緩やかに変わりゆきます.

2010 年 2 月 8 日 | カテゴリー: ニュース

色々な意味でお久しぶりです。
絵師のくろばと申します。

c78サークルカット

c78サークルカット

ノンリニアは夏コミの参加も予定しています。
4月に新たにやってくる、目が輝きに溢れた新入生の皆さんの働きが見れるかもしれない!
水面下で活躍する現行メンバーの会心作が放出されるかもしれない!
というわけで皆様、これからのノンリニアも宜しくお願い致します。

私事ですが私の個人サークルは次回のサークル参加を辞退します…それでこうして描いてるわけですね。これは「箱庭せるふ」のキャラクターを描かせてもらいました。

2010 年 2 月 5 日 | カテゴリー: メンバー紹介

はじめまして。
去年の夏頃から、主にグラフィック方面でお手伝いをさせてもらっているもちもと申します。

今は「育成ゲーム」の企画でグラフィックとシナリオを担当しているのですが、どうにも慣れていないせいかテキストを書くのに苦戦中です。
それでも、何とか締め切り前には完成させて、他のメンバーの作業を中断させてしまわないように頑張りたい。
というか、頑張る!
一気にやったる!
やったるんやでー!

・・・・・・

と、そんな事を言いつつ、胸中は不安で一杯だったりするのですが、
製作中のゲームを色んな人にやってもらいたいという気持ちも強くあるのは確かなので、締め切りまで出来る限りの力を全て出し尽くして頑張ります。

次回からは、製作の状況なんかもお知らせ出来たら良いなぁと考えておりますので、今後も何卒よろしくお願いします!

2010 年 2 月 4 日 | カテゴリー: 中の人の戯言, 活動その他

これを書いている時間上は既に立春、節分は終わってしまいました。
もう、暦の上では春だそうです。
こんばんは、snowgreenです。

先日「3月並の暖かさ」の日があったかと思うと急に雪。
今年もちゃんと雪達磨を作ることができました。
火曜夕方の定例会議の頃にも雪はまだ解け残っていたほどです。
ノンリニアメンバーの中にも、雪合戦をしてきた人がいたとか。

雪が投げられる程度に積もった翌日には、豆を投げる日。
僕は完全に「節分=2月3日」な世代です。
今年は結局豆は撒きませんでした。片付けが大変なので……。

定義上「節分」とは各季節の最終日。でも、たいていは立春の前日を指しています。
基本的には「鬼は外」「福は内」と言って煎った大豆を撒くことになっています。
恵方巻きも最近ではコンビニで見られるようになりました。
……鰯や柊はさすがにコンビニでは扱いづらい気もしますが。

地域によっては「鬼は外」とは言わないこともあるようです。
そもそも「鬼」という言葉はとても広義で、この場合「悪霊」「邪気」と呼ばれる物を指していたと考えられます。
地域の伝承などとも複雑に関わり、その上日本語の資料も豊富なため、調べ出すと切りが無いです。
(ゲームシナリオ用に最近調べていたので)

未だにテスト期間真っ直中です。うちの大学には「鬼」と評される先生方が大勢います。
今はただ、このテストを乗り切ることと来年度に鬼に出会わないことを願うばかりです。

……あと、誰も書かないようなので、当事者として宣伝しておきます。
先月29日発売の晋遊舎さんのiP! 2010年3月号にFORZEが紹介されたそうで。
もう少しちゃんと作り込んでおきたかったなぁ……。

2010 年 1 月 31 日 | カテゴリー: 中の人の戯言

御機嫌よう.かさだんごです.此は物語を楽しんで頂ければ.

――――――

その日,僕は日直の仕事を終えるとカバンを取りに教室に戻った.少し手間取ってしまったのでもう誰も残っていないだろうなと思っていたが,佐藤さんがぽつんと窓のそばに立ってどこか遠くを見ていた.他には誰も居なかった.

佐藤さんは僕に気付くと,待っていたよ,と言った.きょとんとする僕の元へやって来ると,無造作に一冊のノートを取り出し,何も書かれていないページを開いた.そこにさらりと一本の線を引く.

「ここに一本の線分がある.直線じゃなくて,線分.いいね?」

僕は曖昧に頷いた.佐藤さんの短い髪が満足げに小さく揺れた.

「これをひもだと考えよう.このひもは完全に見渡すことができる.そう,視界のうちにすべてを留めておくことができるんだ」

そりゃ有限だからね,と僕は言った.多少だけれども物事を知っている僕にとっては,彼女の言いたいことはなんとなくわかる.つまり,始まりと終わりが存在する,ということだ.

「そう,その通り.じゃあ,ここからはひもを増やすことを考えよう.二本のひもを用意する」

佐藤さんは先程の線分の脇に,ぐちゃぐちゃと絡み合った二本のひもを描いた.

「このひもは一見複雑に絡み合っているよね.固結びしてしまったひもを解くのはなかなかに大変だ.でも,幾何学的には,これを結んだのと全く逆の手順を踏むことでこのひもを解くことができる」

僕はやや考えてから頷いた.ただ適当に頷いているだけでは,佐藤さんにいい加減な人だと嫌われてしまうだろうから.……そんな余計なことを考えている方が,十分に嫌われる原因になりうるとは思うが.

「でも,実はどんなに頑張っても解けないひもがあるんだ.知っているかい?」

佐藤さんは顔を近づけて,僕の目をじっと見つめた.どこか妖しげに微笑んでいるように見えるのは気のせいだろうか.僕は胸の鼓動が早くなるのを抑えられなかった.顔が熱い.もしかしたら紅潮しているかもしれない.佐藤さんはそれを見ているだろうか.ああ,恥ずかしい.

どぎまぎしながら,僕はわからないよと答えた.

「教えてあげようか」

佐藤さんの右手が僕の肩に掛けられ,左手が僕の首筋に添えられる.吐息も届いてしまいそうな距離.ふらりと意識が離れてしまいそうになる.その上目遣い,ああ,反則だ.もう何も頭に浮かんでこなかった.はいとも,いいえとも返事をせず,ただ僕は佐藤さんの蠱惑的な表情にとり憑かれていた.なおも佐藤さんの顔が近づいてくる.

「それはね…………?」

ああ,まずい,それ以上はダメだよ,佐藤さん.僕は焦って教室を見渡す.誰も居ない事は先刻承知だ.しかし確かめる.何度も何度も,ドアの向こうに誰か居ないだろうか,教壇の裏に誰か隠れていないだろうか,ベランダから覗き込む者は居ないだろうか.音にも注意を向ける.誰かの足音は聞こえてこないだろうか,隠れている者の息遣いは聞こえてこないだろうか?

だがそれは逆効果でしか無かった.見えるものは,嗚呼,ほんのり赤みの差した柔らかそうな肌の佐藤さんの顔以外には有り得無かったし,聞こえるものは,佐藤さんの艶やかな唇から漏れる呼吸の音と,自分の緊張と興奮で乱れた鼻息の音以外には有り得なかった.佐藤さんと僕,今ここには二人だけの空間が出来上がっていたのだ.否,教室という日常空間から僕ら二人が切り離されたのかもしれない.どちらでもよかった.どちらにしろ好都合だ.誰にも見られることはないのだから.

僕はいよいよ緊張に心臓が胸を突き破らんとするのを感じて,どうにかこうにか覚悟を決めなければならないと思った.どんな覚悟か,そんなことまで考えている余裕などないが,とにかく覚悟を決めて,落ち着くのである.じっと僕の目を見つめ続けている佐藤さんに対して,僕の視線はちらりちらりと彼女の目を捉えるばかりでちっとも正視できない.せめて彼女の瞳の色を見ようと決意するのだが,彼女から漂ってくるに違いない甘い香りに脳を侵されて,一秒前にしたそんな決意はふいと消えてしまうのだ.

やがて,やがて,とても長い時間に思えた,その時間の後に,彼女は口を開いた.

「それは…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「主婦の財布のひも,だよ♪」

パッと僕を離してけらけらと笑う佐藤さん.僕は唖然とするしかない.ついさっきまで感じていた胸のどきどきや,脳がぽーっと蕩けさせられるような感じ,全身のあわだちはすっぽりと抜け落ち,なんだそれ,なんだそれ,と繰り返すだけの人形になる.それが二百ぺんほど頭の中をぐるぐると回ったところで,ようやく意識がその意味を捉え始めた.

佐藤さんは可笑しそうに笑っている.腹を抱えて笑っている.これまでに見たことがないほど,まるで日本一の漫才を見た観客のように,あるいは世界一のジョークの意味を理解したときのように笑っている.目の端に涙すら浮かんでいる.このときには僕はすっかり意識を取り戻し,呆れと怒りを覚えていた.どちらにせよ,そこまで笑わなくてもいいじゃないか,という意味である.

「ごめんごめん……」

でも,ありがちなとんちだよ,と彼女は付け加えた.それはそうだ.なにより固いひもは主婦の財布のひも.古くから使い古されたフレーズである.わからないほうが悪いと主張することも許されるほど有名なネタだ.確かにそれは認める.だけど,だけど.佐藤さんを前にして,佐藤さんに迫られて,どきどきと心臓が爆発しそうなほど高鳴っていて,脳みそをとろとろに溶かされて,そんな状況の僕にそんなことがわかるハズが無い.佐藤さんはわかってやっていたのだろうか?だとしたら,それは相当な意地悪である.酷い.何より酷い.僕の佐藤さんへの気持ちを弄んだのだから.そう思うと,どんどん怒りが湧いてくる.

だが,僕はもともと気の強い方ではない.そうそう怒ることもない.もう,あんまりいじめないでよ,とたしなめることしかできないような優男なのである.だから今回も僕はそのようなことを言った.そんなイタズラは心臓に悪いからやめてよ,と.

少し残念そうな口振りになってしまったかもしれない.だが実際,彼女と,その,よい関係を築くことを期待していたのだから,仕方ない.顔色にも出ていたかもしれない.僕はそれを悟られたくなくて,佐藤さんに背を向けるように適当な椅子に座った.

「…………」

「…………」

ひとしきり笑い転げたあとの佐藤さんは静かだった.僕も何も言わないから,必然,教室には静寂が訪れる.クラスメイトたちが騒がしく喋っていたはずなのに何故かふと静かになる瞬間,あの感覚に似ていた.どうにも座り心地が悪い.そうかと言って,ここでさっさと立ち上がって帰ってしまうのも躊躇われた.僕はせっかくの佐藤さんと二人だけの空間をまだ続けていたいのかもしれなかった.それは否定できない.学校生活で佐藤さんと二人っきりになることなんて滅多にないのだから.とは言えそれを肯定するのは恥ずかしくて,そんな考えを必死に心の奥に押し留めた.

そんな状況がしばらく続いた.日はどんどんと傾いていった.佐藤さんが立ち上がる音が聞こえた.

「さてと,私は帰るね」

「…………うん」

何気ないふうを装って返事をする.背中を向けたまま,また明日,と言う.そんな素振りが不自然に,心残りに,どこからどう見たって別れを惜しんでいるようにしか見えないことに気づくほど,僕は大人ではなかった.そんな言葉に,しかし佐藤さんは気づかないのか,また明日ね,と普通に答えるだけで,靴音を響かせて行ってしまった.

「…………はぁ」

人に聞かれない程度に小さなため息をつく.彼女すら居ない今そんな配慮は無用なのだが,僕は何故だかそうした.

窓辺に寄り,しばらくの間,ぼうっと外を眺める.ちょうどこの教室に入ってきたとき佐藤さんがそうしていたように.彼女は何を見ていたのだろう?真下の校庭?少し先の鉄塔?あっちのビルだろうか?……あるいは,何も見ていなかったのか.何かを考えていたのかもしれない.何をだろう?再来週のテスト範囲だろうか?それとも僕にどんなイタズラを仕掛けるか,かな.

「…………帰ろう」

僕は先程の出来事を始めから終わりまで思い出してみじめな気持ちになると,カバンを手に取り,教室の電気を消した.早く帰ってお風呂に入って寝よう.胸のもやもやとしたこの気持ちを晴らすために.あるいは見ないようにするために.

僕は足早に廊下を歩いていった.他の教室にも,もう誰も残っていなかった.

こういうときは何も考えないのが一番だ.気にしない.気にしない.胸のもやもやを無いことにはできないけれど.どうしても感じてしまうけれど.歩く.ただ歩く.ひたすらに歩く.途中,先生とすれ違って挨拶をするなどして,下駄箱を目指した.

早く帰ろう.

そう思って,下駄箱に手を突っ込んだ時,何かがカサリと手に触れた.

「あれ?」

それは手紙だった.可愛らしいクマのイラストのついた封筒.ハートマークのシールで封がしてあった.まさかラブレターだろうか.僕は再び,胸が高鳴るのを感じた.誰からだろう.何事だろう.表,裏,表,裏,何度もひっくり返す.差出人の名前はどこにも書いていなかった.中に書いてあるだろうか.

僕はシールの封を破かないようにそうっと剥がすと,中の手紙を取り出した.外の封筒と比べ,ずいぶんといい加減な便箋が使われている.大学ノートを4つ折りにしただけのようだ.しかも一つの端は手でちぎったようにぎざぎざになっている.手紙にするのなら,普通はハサミくらい使うだろうに.

「これは……?」

開いてみると,それはつい先程見たものだった.そう,佐藤さんが描いたひもの絵がある紙片だったのだ.そこに見た記憶の無い一行,たった一行だけが女の子らしい丸みを帯びた文字で書き加えられていた.僕はそれを見て,胸が熱くなるのを感じた.そして全てを理解した.彼女はおそらく,少しずるい知恵を働かせたのだろう.脈無しならあのまま冗談にしてしまおう,という.

――君と私の小指の赤い糸を本当の正解にしちゃ,ダメかな……?